メタバース通話アプリ「POPOPO」利用上のリスクに関する一考察


概要

2026/03/18 15:00にリリースされた新SNS「POPOPO」利用上の様々なリスクについて、
利用規約や公式の発表する情報を元に考察してみました。

その結果、以下のような問題があり、POPOPOでのプライベートな会話は控えるべきと考えられます。

  • 通話音声が中国クラウドサービス「Tencent TRTC」を経由
  • 著作権トラブルのリスク(著作者人格権の不行使条項)
  • サービスの持続可能性に関するリスク

そこで上記3点の問題に注目し、
さらに具体的に掘り下げた解説していきたいと思います。


目次


中国クラウド経由のリスク

まず一番大きなリスクとして、通話音声が中国クラウドサービスを経由するという点が挙げられます。


プライバシーポリシーの記載

「POPOPO」プライバシーポリシー[1]にはTencent TRTC SDKを用いて音声データを収集する点が明記されており、
これは最大30人の低遅延同時通話を実現するために活用されていると推測されます。

Tencent TRTC SDK

提供者:Tencent
取得項目:音声データ
取得方法:任意取得
利用目的:利用に関する動向調査、不具合調査、パフォーマンス測定、検証及び改善

詳細はhttps://trtc.io/ja/document/48827をご確認ください。

またTencent TRTC SDKでは、「テレビ電話」として最低限必須とされるE2EE機能を備えておらず
これはサービス提供者によって容易に盗聴されうることを示しています。

通話アプリとして競合であるDiscordやLINEはE2EE機能を標準で備えており
テレビ電話を名乗る上では明確なウィークポイントといえます。


実際に中国を経由するか

Tencentのドキュメント[2]によるとTRTCのエンドポイントは
国内1リージョン、中国6リージョン、その他8リージョンが存在するようです。

このうち、リージョンを明示的に指定しない場合の
エンドポイントであるtrtc.tencentcloudapi.comへの
アクセスは43.153.165.52という日本国内に割り当てられた
IPアドレスへ繋がることが確認できました。

そのため、次にtracertコマンドを使い、
このIPアドレスが本当に日本国内に存在するのか推定してみることにしました。

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$ traceroute 43.153.165.52 -n
traceroute to 43.153.165.52 (43.153.165.52), 30 hops max, 60 byte packets
1 ローカルIP (ルータ)
2 ローカルIP (Dish)
3 ローカルIP (ISP内)
4 206.224.70.198 (SpaceX) 38.903 ms 206.224.70.194 38.897 ms 206.224.70.206 38.901 ms
5 206.224.70.182 (SpaceX) 38.273 ms 38.264 ms 206.224.70.184 38.255 ms
6 210.171.225.169 (JPIX) 38.866 ms 36.828 ms 36.817 ms
7 * * 30.1.180.137 (United States Department of Defense) 29.590 ms
8 29.109.129.206 (United States Department of Defense) 29.529 ms 29.109.129.100 (United States Department of Defense) 28.940 ms 29.109.129.92 (United States Department of Defense) 28.706 ms
9 29.47.15.1 (United States Department of Defense) 29.094 ms 49.972 ms 49.950 ms

United States Department of Defenseって米国防総省?

Starlinkは有事には盗聴されている可能性があるため回線を変えます。

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PS C:\Users\admin> tracert 43.153.165.52

43.153.165.52 へのルートをトレースしています。経由するホップ数は最大 30 です

1 <1 ms <1 ms <1 ms _gateway
2 3 ms 3 ms 3 ms 118.23.89.251
3 4 ms 5 ms 4 ms 118.23.89.213
4 7 ms 3 ms 3 ms 153.146.171.89
5 4 ms 4 ms 4 ms 122.1.245.57
6 4 ms 4 ms 4 ms 210.254.188.33
7 4 ms 4 ms 4 ms 122.1.245.206
8 4 ms 4 ms 4 ms ae-9.a03.tokyjp05.jp.bb.gin.ntt.net [120.88.53.21]
9 7 ms 6 ms 7 ms ae-0.zenlayer-c3-networks.tokyjp05.jp.bb.gin.ntt.net [61.120.146.54]
10 7 ms 6 ms 7 ms 98.98.102.47 (Zenlayer Inc)
11 * * * 要求がタイムアウトしました。
12 5 ms 5 ms 6 ms 29.109.129.92 (United States Department of Defense)
13 6 ms 5 ms 5 ms 29.47.15.1 (United States Department of Defense)
14 6 ms 6 ms 6 ms 43.153.165.52

回線変えても同じNWを経由しました。

詳しく調査してみると、29.47.15.1は確実にDoDのものですが未使用であり、
JPIXとTencentとの接続点となる内部NW(日本国内)でTencentがこのIPアドレスを無断で流用している
可能性が極めて高いという結果になりました。

従って、通話音声は経路として第三国を経由しないといえます。


実際に中国を経由するか - 国内法の影響

しかし、Tencentは中国企業であり、中华人民共和国国家情报法[3]等の中国国内法を遵守する義務があります。

第七条 任何组织和公民都应当依法支持、协助和配合国家情报工作,保守所知悉的国家情报工作秘密。国家对支持、协助和配合国家情报工作的个人和组织给予保护。

第七条 いかなる組織及び国民も、法律に基づき国家情報活動を支持し、協力し、これに応じるとともに、知り得た国家情報活動の秘密を保持しなければならない。国は、国家情報活動を支持し、協力し、これに応じる個人及び組織を保護する。

実際にTencentが運営しているWeChat等の製品においては、中国国内法によるリスクが既に指摘されています[4]。

WeChat, a messaging, social media, and electronic payment application owned by the Chinese company Tencent Holdings Ltd., reportedly has over one billion users worldwide, including users in the United States. Like TikTok, WeChat automatically captures vast swaths of information from its users. This data collection threatens to allow the Chinese Communist Party access to Americans’ personal and proprietary information.

中国企業テンセント・ホールディングス傘下のメッセージング・ソーシャルメディア・電子決済アプリ「WeChat」は、米国を含む世界中で10億人以上のユーザーを抱えていると報じられている。TikTokと同様、WeChatもユーザーから膨大な量の情報を自動的に収集している。こうしたデータ収集により、中国共産党が米国人の個人情報や機密情報にアクセスできる恐れがある。

そのため、Tencentが個人情報保護方針に反して盗聴や長期記録を支援し、
なおかつ「国家情報活動の秘密保持」という名目で一切の通知を行わないリスクは現実のものであるといえます


実際に中国を経由するか - 結論

結論としては通話音声は中国国内を通らない可能性が高いです。

一方で、Tencentが中国国内法を遵守する義務がある以上、日本国内のTencentの資産にもその影響が及びます

加えて、IANAのIPアドレス割り当て規則すら守らずに無断でIPアドレスを使用しているCSPが
収集した情報を事故で流出させるリスクが低いとは評価できません。

E2EEを採用しない設計であり、サービス提供者による盗聴を防ぐ仕組みがないという点も、
盗聴リスクを大幅に引き上げているといえます。

そのため、直接の中国国内経由はないもののプライバシーリスクが非常に高いと考えられます。


通話音声以外の個人情報の安全性

音声がTencentのサービスを経由する一方で住所や名前といった個人情報については、
プライバシーポリシー[1]の記述からも、アメリカ合衆国以外の外国への提供はないと考えてよいです。

外国の第三者への提供
当社は、以下の場合に外国のクラウドサービスの利用に伴い個人情報を提供する場合があります。その場合に参考となるべき国別の情報は、現時点において、次のとおりです。なお、当該外国の第三者にて個人情報を取り扱う場合は、当該外国の個人情報の保護に関する制度等を把握、および当該サービスのセキュリティ管理体制等を定期的に確認しています。

1.アメリカ合衆国
a.当該外国の個人情報保護制度
個人情報保護委員会が提供する情報を以下のリンクからご確認ください。
https://www.ppc.go.jp/enforcement/infoprovision/laws/offshore_report_america/
b.第三者が講ずる個人情報保護措置
提供先は、概ね個人データの取扱いについて我が国の個人情報取扱事業者に求められる措置と同水準の措置を講じています。

さらに、アメリカ合衆国への個人情報提供については、アメリカ合衆国内で訴訟や法執行が発生した場合が主であり、
日本人向けのサービスである「POPO」においては無視できる程度のリスクと考えられます。


著作権トラブルのリスク

次に大きなリスクとして、著作権リスクが挙げられます。

「POPOPO」利用規約[5]には以下のような記述があり、これが大きなリスクとなります

前二項の定めに基づき、当社又は他のPOPOPO会員が、提供情報を本サービスのシステム仕様等に合わせて変更又は編集する場合があることを踏まえ、POPOPO会員はこれらに対し著作者人格権を行使しないものとします。

配信者コンテンツの著作権は、前項の通り配信者ご本人(又は原権利者)に帰属します。その上で、配信者は、当社が本サービスを円滑に提供・改良すること、本サービスの広告宣伝を行うこと、及び本サービス内のコミュニティを活性化させることを目的として、配信者コンテンツを国内外を問わず利用(複製、複写、改変、送信、頒布、貸与、翻訳、翻案等)することを、当社及び当社が指定する第三者に対して、無償かつ期間の定めなく許諾するものとします。なお、本項に基づく利用にあたり、配信者は著作者人格権を行使しないことに同意します。


著作者人格権とは

まず、著作者人格権とは何かというと、日本の著作権法で定められている「人格的な権利」で、
クリエイターが自分の作品に対して持っている以下のような権利のことをいいます。

同一性保持権:作品を勝手に改変されない権利
氏名表示権:作品を使うときに自分の名前を表示してほしい権利
公表権:まだ公開したくない作品を勝手に公開されない権利

これらは譲渡できない(売れない)権利ですが、契約で「行使しない」と同意すれば放棄したことになります。
POPOPOはまさにこの「行使しない」ことを規約で強制しています。


POPOPOはあなたの作品をどこまで使えるのか?

例えば、あなたが友人との通話でオリジナルの曲を披露したとします。

これを聞いていた会社側は:

  • その声を抜き出して公式プロモ動画のBGMに使ったり
  • AIを使って声や音楽を編集したり

といったことを、 あなたの名前を表示せず報酬は一切なしで行って、
YouTubeやTikTokで世界中に配信してもよいということになります。

それでもあなたは「声いじくらないで!」「名前出して!」「報酬を支払って!」とは言えません。
規約で「著作者人格権を行使しない」と約束済みだからです。

これらは著作権上のリスクが非常に高い、利用者にとって極めて不利な条件といえます。


事業継続リスク

POPOPO(ぽぽぽ)は、声だけでリアルタイムに3Dアバターが動き、最大30人同時通話が可能な新感覚コミュニケーションサービスとして注目を集めています。
しかし、サービス開始直後から指摘されているのが事業継続性の観点です。
特に、クリエイターが自分のオリジナルコンテンツを柔軟に持ち込めない「閉鎖型」設計が、長期的なユーザー離れや収益悪化を招く可能性があります。

さらに、大企業などによる財政的な支援がないスタートアップ企業であるため財政基盤が脆弱であり、
サービス終了リスクも一定以上考慮する必要があります。

急なサービス終了が発生した場合、購入アイテムの消失人間関係の途絶といった問題を引き起こす可能性があり、
これに備えた対応が必要になると考えられます。


VRChatとの比較

メタバースプラットフォームとして、ほぼ唯一事業を継続できているVRChatは、ユーザー生成コンテンツ(UGC)をプラットフォームの基盤に据えたモデルで成長しました。
ユーザーはUnityで作成したアバターやワールドを自由にアップロード・販売でき、クリエイター経済(Creator Economy)が活発に機能しています。
結果として、ユーザー自身がプラットフォームを豊かにし、長期的なエンゲージメントを支えています。

一方、POPOPOは公式プリセット(ホロスーツ400種以上)と限定コラボIP(エヴァンゲリオン、東方Projectなど)のみを提供し、
ユーザーによるオリジナル3Dアバターやモデルの自由インポートを認めていません。
これは、CTOのVRM開発経験を活かした技術基盤でありながら、意図的に「管理されたエコシステム」を構築した結果です。
この違いは、クリエイターのモチベーションに直結します。

VRChatでは「自分の作品を世界中に届け、収益化できる」自由度が高いのに対し、POPOPOでは「公式コンテンツを購入・使用するだけ」の消費者ポジションに留まりやすいのです。
結果として、ユーザー生成の多様性が不足し、飽きが早く来る可能性が高まります。


サービス終了時にどうなるか

POPOPOの利用規約[5]は、事業継続リスクを明確に示しています。

当社は、当社の裁量により、いつでも本サービスの内容を変更し、又は提供を終了できるものとします。

誤って退会手続をした場合その他理由の如何を問わず、POPOPO会員が本サービスを利用する権限を失った場合、POPOPO会員は、本サービス上に蓄積した情報を利用することができなくなります。

退会等によりPOPOPO会員が会員資格を喪失した場合は、コンテンツの使用権も消滅するものとします。

また、当社は理由の如何にかかわらず、すでに支払われた利用料金を一切返還しません。

つまり、会社が「サービス終了」を決定した場合、またはアカウントが削除された場合、
購入済みのアバター・アイテム・プレミアム機能は即座に使用不能となり、一般的なソーシャルゲームなどで行われている返金対応などは行われない可能性が高いです。
データ保存義務もないため、過去の会話履歴やコミュニティ記録も失われます。

そのため、次のような対策を行ってプラットフォームと上手に付き合っていく必要があるといえます。

  • 重要な人間関係はアプリ外(LINE、Discordなど)でバックアップを取る
  • クリエイター志向のユーザーは、VRChatや類似のオープン型プラットフォームを併用する

まとめ

本記事では、メタバース通話アプリ「POPOPO」利用上の主なリスクとして、

  • 中国クラウド経由のプライバシーリスク
  • 著作権トラブル
  • 事業継続性
    を挙げました。

サービスは挑戦的で新しく興味深いものですが、その背景に潜むリスクの程度は大きく、
不特定多数に向けた配信用のプラットフォームとしての活用が最も適しています。

加えて、作品発表の場としてはほかのサービスを利用する等、
細心の注意を払った上での利用が推奨されます。

免責事項

本記事は筆者の個人的な考察に基づき、公開情報から導かれたものであり、公式見解や法的アドバイスを代用するものではありません。
記載されたリスクは可能性を示すに過ぎず、確定的なものではありません。
サービス利用にあたっては、最新の利用規約およびプライバシーポリシーを直接確認し、必要に応じて専門家に相談してください。
記事内容によるいかなる損害についても、筆者は責任を負いません。

参考文献

※アクセス日を明記しております。リンク切れの場合はInternet Archive等で情報ソースをご確認ください
[1]: プライバシーポリシー (Accessed:Wed Mar 18 2026)
[2]: Tencent Real-Time Communication サーバー側 API 製品ドキュメント
[3]: 中华人民共和国国家情报法_中国人大网 (Accessed:Wed Mar 18 2026)
[4]: Executive Order on Addressing the Threat Posed by WeChat – The White House (Accessed:Thu Mar 19 2026)
[5]: 利用規約 (Accessed:Thu Mar 19 2026)

メタバース通話アプリ「POPOPO」利用上のリスクに関する一考察

https://lunatic.red/2026/03/18/メタバース通話アプリ「POPOPO」利用上のリスクに関する一考察/

Author

fuchse-ohren

Posted on

2026-03-18

Updated on

2026-03-19

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